日本健康・スポーツ教育学会 第12回学術大会

発表内容 要旨

理事長 ご挨拶

『第12回学術大会によせて』

柴岡 三千夫 理事長(一般社団法人日本健康・スポーツ教育学会・日本ウェルネススポーツ大学・公益財団法人日本幼少年体育協会 理事長)

要旨
一般社団法人日本健康・スポーツ教育学会は、第1回から掲げる統一テーマ「健康・スポーツ・教育の連携による幼少年期からの生きがい創り」のもと、第12回大会を迎える。近年はWell-being 向上に向けた教育的アプローチの開発が求められ、特に大学教育では緊急課題となっている。本大会では、日本ウェルネススポーツ大学の実践を踏まえた講演やワークショップ等を通じ、Well-being 向上教育の理論と実践を共有し、活発な意見交換を期待する。

大会長講演

「Well-being 向上教育の推進~前向きな年齢の重ね方に視点を当てて~」

柴岡 信一郎 博士(日本ウェルネススポーツ大学学長、一般社団法人日本健康・スポーツ教育学会副理長)

要旨
第12回大会は「Well-being 向上教育の推進」を主題に、講演・WS・口演等を通じて実践と理論を共有する場とする。関係各位への感謝を述べつつ、学会の発展と大会成功を祈念する。
昨年のFD研修会で好評だった「老朽化予防教育」を基に、高齢者に限定されない生涯発達視点から「Well-being 向上教育」へと概念を拡張した背景を示す。健康教育は環境整備に比べ遅れており、個人の力の育成が重要であること、PERMAなど前向き思考の実践と注意点、日本独自のウェルビーイング指標の意義を述べ、教育と社会全体での推進の必要性を強調している。

特別講演

Well-being質向上~新たな労働観にいかに向き合うか~

演者
平山 弘(阪南大学)
要旨
阪南大学では、令和8年11月からオフィスカジュアル制度を導入し、自由で清新な気風のもとで働けるウェルビーイング重視の組織文化づくりを進めている。第2期中期計画「ウェルビーイングにあふれ、社会が求める新たな価値を共創できるイノベーション・コモンズへ!」のもと、ハラスメント撲滅や心理的安全性の確保を含む組織運営改革を推進している。ウェルビーイングの本質を「受動ではなく能動」と捉え、「体験への没入を通して抽象的概念のリアル化を呼び起こす」ことが重要とされる(本文より)。大学では教職員対象のウェルビーイング調査や、隠れた努力を称える「HIRAYAMA Award 2025」など具体的施策を展開している。
教育面では、次期学習指導要領にウェルビーイングが明示され、児童生徒の生きる力の基盤として位置づけられつつある。授業科目「学校制度論」では、日本の不登校支援と、イギリス・アメリカにおける「persistent truancy(常習的怠学)」のような社会的リスクとしての捉え方を比較し、ウェルビーイングの観点から長期欠席問題を考察している。さらに、新たな労働観として台頭する「静かな退職」についても検討し、ウェルビーイング・休養学・ハッスルカルチャーの関係を整理。多様な価値観の中で、合理性とやりがいのバランスをいかに取るかが今後の働き方の鍵であると結論づけている。
プロフィール
平山 弘(ひらやま ひろし)
神戸市灘区出身。
現職:阪南大学長/学校法人阪南大学常任理事/経営学部教授兼大学院企業情報研究科教授。
略歴:神戸商科大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得退学、大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。兵庫県高等学校教員、阪南大学流通学部専任講師、助教授・准教授、教授、流通学部長/学校法人阪南大学理事・評議員、大学院企業情報研究科長。
主要業績 単著:『ブランド価値の創造-情報価値と経験価値の観点から-』晃洋書房、2007年。『ブランド価値創造戦略に求められるもの-目に見えるものを通して目に見えない何かを捉える-』晃洋書房、2016年。『ブランド価値基盤の転換とブランド再構築』晃洋書房、2020年。学会賞等:日本流通学会奨励賞受賞(2008年)、公益財団法人日本教育公務員弘済会兵庫支部教育実践研究論文 奨励賞(2018年)、日本商業教育学会 奨励賞(2019年)。

ワークショップ

ワークショップ1
「2025デフリンピックが学生のWell-beingにもたらす影響」

演者
角田 弘子(日本ウェルネススポーツ大学)
要旨
2025年デフリンピック東京大会を観戦した大学生へのインタビューから、初めて触れる競技特性や音声に依存しない運営への理解が深まり、障害観や公平性、多様性への認識が揺さぶられたことが示された。発達途上にある学生にとって、この経験は他者理解や社会参加の在り方、自己の役割を再考する契機となり、長期的なWell-beingの向上に寄与する可能性が高い。

ワークショップ2
「リスキリングの意義と効用 更なるwell-being1を目指して
-保育士・放課後児童支援員資格取得を中心に-」

演者
平山 実(日本ウェルネススポーツ大学)
増澤 將江(日本AI・IT・保育専門学校)
要旨
還暦以降に保育士国家試験へ挑戦した経験を基に、リスキリングの意義と効用、直面した課題を整理した。最新知識の学習と現場経験の往還により実践的視点が養われ、学生への教育にも好影響を及ぼした。関連資格取得を通じてスキル多重化の重要性も確認された。さらに、オンライン教育の可能性や施策の課題も明らかとなり、年齢に関わらず学び続けることがwell-being向上に寄与することが示唆された。

ワークショップ3
「身体活動を取り入れたLife Skills形成のための学習指導過程の開発
- 問題解決スキルに着目して -」

演者
山田 浩平(愛知教育大学)
山羽 教文(㈱ STEAM Sports Laboratory)
小松 健太郎(㈱ STEAM Sports Laboratory)
大津 一義(日本ウェルネススポーツ大学)
要旨
中学生107名を対象に、身体活動を取り入れた問題解決スキル育成プログラムを実施し、介入前後を比較した。その結果、問題解決・対人関係・共感性・ストレス対処の各ライフスキルに加え、セルフエスティームが有意に向上した。活動量も一定水準を示し、生徒の多くが学習意欲の高まりを報告した。以上より、身体活動を伴うアクティビティは中学生のライフスキル形成に有効であることが示された。

幼体セッション
「幼児の運動あそびを通した生きる力の基礎づくり
~幼稚園・保育園の行事における心の健康づくりに着目して~」

演者
山口 智之(日本ウェルネススポーツ大学)
要旨
幼児の行事に必要な技能を日常の遊びに取り入れ、「生きる力の基礎」である体力・気力・知力を育む活動を体験・考察するワークショップである。動画視聴で幼児の反応や指導法を分析し、実技では行事につながる動作を体験。参加者同士の意見交換を通して、日常化した活動が心の健康にどう寄与するかを探り、現場での活用方法を深める。

ワークショップ4
「Well-being 向上教育の実証的実践
- スポーツ先端科学に基づくAIを活用した非認知能力の可視化 -」

演者
山羽 教文(㈱ STEAM Sports Laboratory)
山田 浩平(愛知教育大学)
薗部 正人(日本ウェルネススポーツ大学)
大津 一義(日本ウェルネススポーツ大学)
要旨
AI とスポーツ先端科学を統合し、部活動を中心とした非認知能力とWell-beingの育成を支援する研究である。対話型 AI「Coach Quest」により目標設定・振り返り・抽象化を促し、対話ログを解析する可視化指標「GrowthMap」で生徒の成長を時系列で把握する。UTSSIと連携した介入研究を通じ、非認知能力向上への効果検証と教育現場への実装可能性を探る。

ワークショップ5
「基本的自尊感情における共有体験の意義を考える
-ICT 活用の可能性と身体性を視野に-」

演者
近藤 卓(日本ウェルネススポーツ大学)
要旨
本ワークショップは、WHO が示す健康概念とライフスキル教育を背景に、特に共感性を高めることで基本的自尊感情を育むことを目的とする。絵本の「共有体験」を通して、他者と感情を共有する身体性の重要性を体験的に確認し、自尊感情の変化を心理尺度「そばセット」で測定する。共有体験が Well-being 向上に寄与する可能性を探る取り組みである。

口頭発表

A会場

  • A-1「多世代間交流を通じた地域課題解決とウェルビーイング -「三世代食堂」の事例-」

    木戸 直美(静岡福祉大学)
    要旨
    三世代食堂の実践を通じ、子ども・保護者・高齢者が同一空間で交流する多世代間交流の可能性を検討した。参加者は幅広い年代に及び、イベント評価は高かった。こども食堂未経験者の参加もみられ、地域の社会参加を広げる機能が示唆された。一方で、交流は親族内に偏る傾向があり、意図的な交流設計の必要性が示された。

B会場

  • B-1「留学生に対するICTを活用した学習指導のあり方」

    岩田 忠久(日本ウェルネススポーツ大学)
    要旨
    ICTの発展により、映像・音声を含む多様なデジタル教材が活用され、理解促進や個別最適学習、教材改善が容易になった。留学生教育では、画像やルビ、翻訳文を用いた教材提示が効果的であり、スマートフォン学習を前提とした設計が重要である。情報量の調整、平易な文章表記、体系的な画面構成に留意し、学習者自身が内容をまとめる活動が理解定着に寄与する。
  • B-2「徂徠学と朱子学の相克 -庄内藩儒水野元朗と加藤大弐の書状から-」

    瀬尾 邦雄(日本ウェルネススポーツ大学)
    要旨
    本研究は、庄内藩における朱子学から徂徠学への転換過程を、水野元朗と加藤大弐の書状を手がかりに実証的に検討した。両者は学派の相違から断交したが、大弐は元朗の学識と人格を理解する中で徂徠学の意義を再評価し、思想は人物を介して伝播・理解されるという儒学受容の実態が明らかとなった。
  • B-3「老子の哲学思想」

    尹 東燦(日本ウェルネススポーツ大学)
    要旨
    本研究において、老子は、「春秋戦国の混乱」を人間の知恵と欲望が生んだ差別・対立・戦争の結果と捉えた。文明社会の弊害を批判し、知恵を捨て(絶聖棄智)、自然の理に従う「無為自然」の生き方を理想とした。道を万物の根源とし、差別なき平等の世界を説く老子思想は、現代の国際社会にも示唆を与える。
  • B-4「冷戦研究の現代的意味について -Well-being の視点からの考察-」

    大久保 成道(日本ウェルネススポーツ大学)
    要旨
    本研究は、冷戦を契機として国際政治に内在する「対立」の本質を探り、その歴史的・思想的背景を整理する。主権国家・個人主義・要素還元主義が近代の対立構造を形成し、冷戦はその極致として現れた。対立は利便と不便を併せ持つ歴史的逆説を生むため、その克服にはWell-beingの価値定位が有効であり、アジア思想も示唆を与えると結論づける。

C会場

  • C-1「東京都中学生の陸上競技の記録の変遷に関する研究」

    温井 一裕(日本ウェルネス高等学校)
    杉町 マハウ(日本ウェルネススポーツ大学)
    本間 一輝(日本ウェルネススポーツ大学)
    要旨
    本研究は、東京都中学生陸上競技の2019~2025年の記録を分析し、種目別の変遷を検討した。コロナ禍の影響で20・21年に大きな変動が見られたが、長期的には男子砲丸投、女子走幅跳・走高跳などで低下傾向が確認された。要因として用具進化との不均衡、校庭中心の練習環境、指導法の限界が考えられ、今後も継続的なデータ収集と多角的分析が必要と結論づけた。
  • C-2「スポーツ教育による社会的老朽化の予防と基本姿勢の再構築」

    安藤 秀樹(日本ウェルネススポーツ大学)
    要旨
    本研究は、現代社会で進行する「社会的老朽化」(人間関係の希薄化・文化的連帯の衰退)に対し、生涯スポーツを通じた基本姿勢(協調・責任・役割・感謝)の育成が有効であると論じる。スポーツ教育は世代や立場を超えた関係性を生み、社会的充足を高める場として機能する。地域再生や孤立予防にも寄与し、今後は教育政策・地域振興と連携した制度化が求められる。
  • C-3「茨城県利根町における高齢者の体力変化の現状について -きんとれ会(大学地域貢献)参加者の体力測定結果から-」

    薗部 正人(日本ウェルネススポーツ大学)
    要旨
    利根町の高齢者運動クラブ「きんとれ会」参加者を対象に、コロナ前(2017年)、拡大後(2022年)、5類移行後(2023・2024年)の体力測定を比較した。身体的特徴に大きな変化はなかったが、6分間歩行で有意な低下がみられ、運動機会の減少が影響したと考えられる。活動休止中の現状を踏まえ、早期再開と継続的な運動機会の確保が健康寿命延伸とQOL向上に不可欠であることを示した。
  • C-4「総合型地域スポーツクラブの現状と課題(第二報) -東京都羽村市の”はむすぽ”を事例として」

    堀松 英紀(日本ウェルネススポーツ大学)
    要旨
    本研究は、羽村市の総合型地域スポーツクラブ「はむすぽ」が、設立から18年間で直面した運営課題に対し、法人化・はむりん操演委託事業・フリーランス法対応の3点から改善策を検討したものである。法人化は責任所在・契約主体・信頼性向上のために不可欠であり、操演事業は財源確保に寄与した。さらに指導者の多くがフリーランスであることから法令遵守体制を整備した。今後は世代交代と施設管理体制の検討が課題となる。
  • C-5 「部活動指導者の養成・普及のための育成講座 ~中学・高校の部活動発展とWell-being向上のために~」

    千葉 智久(日本ウェルネススポーツ大学)
    要旨
    少子化と教員の過重負担により、従来の教員主導の部活動運営は限界を迎えている。本研究は、持続可能な部活動の実現に向け、外部指導者、とくに学生を対象とした「育成講座」の必要性を検討した。講座では教育的視点、安全管理、指導倫理、実践研修を体系的に学ばせ、質の高い指導者育成と地域連携を促進する。外部指導者の養成は部活動改革の中核であり、生徒の成長とWell-being向上に寄与する。

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