第9回 日本健康・スポーツ教育学会 学術大会

発表内容 要旨

特別講演

『ウェルビーイングの視点からの交流によるまちづくり』

演者
髙橋 伸佳(芸術文化観光専門職大学)
座長
大津 一義(日本ウェルネススポーツ大学)
要旨
ウェルビーイングは、2000年頃から急速に研究が進み国際的には複数の研究分野の鍵概念となってきたが、新型コロナウイルス感染症の拡大と長期化により、このような新たな価値観に対する議論に拍車をかけることになった。ウェルビーイングによる明確な仕組み化やプログラム化は、生きがいの機会創出や幸せで健康で幸福な生き方のモデルになるばかりではく、地域の限りある資源を有効に活用することにもつながることが期待されると結論付けた。

セミナー

セミナー1
『持続可能で多面的なWell-beingの創出とマネークリップレクチャー』

演者
吉田 倖子(あいである)
角田 弘子(日本ウェルネススポーツ大学)
要旨
SDGsの目標であるGoal3では、well-beingという言葉が採用され、身体的な健康だけではなく、社会的な問題に触れる機会を持ち、多面的に学ぶ機会を得ることで、well-beingの創出が期待されている。マネークリップレクチャーは、日常生活に直結した問題に触れる機会を提供できるツールであり、今後も児童養護施設で養育されている子どもを中心に普及していく。

セミナー2
『新しい時代(Society 5.0)に向けて大学教育(文理融合教育)の在り方』

演者
岩田 忠久(日本ウェルネススポーツ大学)
要旨
我が国の科学技術政策として第5期科学技術基本計画において『大学学部・大学院を通じた文理融合教育の推進』が具体的方策の一つとして示され、複数の大学が文理融合教育を推進している中、日本ウェルネススポーツ大学において、新しい時代(Society 5.0)に向けての文理融合教育の在り方について議論がなされた。

セミナー3
『基本的自尊感情を育む共有体験の教育実践 ~ICTの活用を視野に入れて~

演者
近藤 卓(日本ウェルネススポーツ大学)
要旨
3年に及ぶ新型コロナウィルス感染症の広がりの中で、これまで以上に子どもたちを取り巻く環境は大きな変化を見せ、直接的な対面での関わりが限定的となる中、身体性を伴う共有体験の減少が、社会性の発達や基本的自尊感情の醸成に影を落としていると考えられる。その基本的自尊感情を育む要因と考えられる共有体験の意味を再確認し、さらにICTを活用した共有体験の可能性について議論がなされた。

ワークショップ1

『高齢化が進む地域におけるウェルビーイングへの取り組み ~利根町の実践を通して~

演者
石田 良恵(日本ウェルネススポーツ大学)
小島 和彦(TONEウェルネスきんとれ会)
伊藤 義朗(TONEウェルネスきんとれ会)
大野 次男(TONEウェルネスきんとれ会)
布袋 哲朗(利根町役場政策企画課)
要旨
高齢化が急速に進んでいる利根地域において、高齢者が100歳という将来に向け幸せと感じて満足できるウェルビーイングな時間を過ごすことが可能であってほしいとの期待が大きい。今回、利根町での高齢者のウェルビーイングな将来に向け、これまでの活動の経緯と課題・提言を踏まえた実現可能なウェルビーイングの具体策について、議論がなされた。

シンポジウム

シンポジウム1
『well-beingを踏まえたAIと人間の適切な関係に関する一考察 -教育とスポーツを中心に-

シンポジスト

「基調講演」

座長 平山 実(日本ウェルネススポーツ大学)

「スポーツへのAI活用に関する研究」

大久保 英樹(芝浦工業大学)

「Well-being時代におけるAIと学校教育の動向について」

平山 弘(阪南大学)
要旨
本シンポでは、well-beingを踏まえたAIと人間の関係に関して、教育とスポーツの事例を通して、その適切な関係を議論し明らかにすることを目的にした。教育では、ウェルビーイングの本質である生徒の「健やかさ・幸福度」を前提に置きながら、AI導入によるタブレットでの学習と、教員自身が授業を行う教育手法との間に齟齬が生じないよう、その役割分担やはっきりとした線引きが求められる。」と結論づけ、スポーツでは、「さらに多くのスポーツにおけるAI活用の動向と導入を困難にしている要因について、分析していく必要がある。」と結論づけた。

シンポジウム2
『大学スポーツにおける運動部学生の生きがいづくり』

シンポジスト

「基調講演」

座長 鈴木 隆広(日本ウェルネススポーツ大学)

「陸上競技部の事例」

杉町 マハウ(日本ウェルネススポーツ大学)

「バスケットボール部の事例」

中宿 晃(日本ウェルネススポーツ大学)

「野球部の事例」

坂本 希望(日本ウェルネススポーツ大学)
要旨
大学スポーツにおいてスポーツの価値を高めるためには運動部学生がどのような「生きがい」を感じて運動部活動に取り組んでいるのか、指導者は「生きがい」について学生に対してどのような意識を持って指導にあたっているのかなど、本学の指導者の視点から議論を深め、運動学生の生きがいづくりについて指導者からそれぞれ発表し指導方針や指導体制のほか学生の生きがいづくりにつながるモチベーションアップの方法や学業と運動部活動に関する配慮等について明らかにした。

シンポジウム3
『平和教育の困難性』

シンポジスト

「日本の平和主義の曖昧性が何故生じたのか」

座長 工藤 美知尋(日本ウェルネススポーツ大学)

「公民科教育における平和主義と安全保障 -政治学からの批判的検討-」

菅谷 幸浩(亜細亜大学)
要旨
日本の平和主義の原点は、1947年に制定・発布された「日本国憲法」にある。日本国憲法の特に「平和主義」については、これをいかに具体化していくかについて国論が分れている。ここでは、「憲法第9条が制定された過程を検証する」ことによって、日本の平和主義の曖昧性が何故生じたのかについて考察し、人間も国家も最終的には自分の運命に責任を持たなければならないことを示した。また「公共」を事例として、戦後日本における平和主義と安全保障の在り方をめぐる問題点と今日的課題を検討した。

一般口演

<WELL-BEING領域>

座長
角田 弘子(日本ウェルネススポーツ大学)
平山 弘(阪南大学)
  • A-1ヒューマンライツとSDGs

    角田 弘子(日本ウェルネススポーツ大学)
    要旨
    スポーツにおける子どもへの虐待の広がりを明らかにし、データ収集の改善や教育、意識啓発のための研修等、スポーツをする子どもの保護を強化するための提言がなされ、日本での学校やスポーツ現場における近年の動向を考察した。その結果から、子ども自身に対しても、暴力を受けない権利や声をあげる権利などの啓発を行うことが重要であり、しっかりと法を遵守し、暴力のない社会を育まなくてはならない。
  • A-2ウェルビーイング時代におけるブランド価値の重要性

    平山 弘(阪南大学)
    要旨
    ウェルビーイング時代におけるブランド価値の重要性ということで、筆者なりの観点から考察してきたが、その本質的なことは自らが自らの幸福度と社会的にも満たされた状態を想定し、積極的に自らのライフスタイル設計に関与していくことに他ならないと言える。そのためには新たな価値創造を意識した情報価値のプラットフォームをブランド価値の観点およびブランド・コミュニケーション戦略を通しての枠組みづくりが非常に大きな意味を持つことになると考えられる。
  • A-3生きがいとしてのコミュニケーション -林芙美子の作品から見出す-

    ソコロワ山下 聖美(日本大学芸術学部)
    要旨
    日中戦争のさなか、アジア太平洋戦争の前夜に描かれた「扁舟紀行」には、独特な閉塞感を伴う不安に満ちた空気と、そこに生きる人々の日常が描かれていた。旅路における彼らとの感性を伴ったコミュニケーションを通じて、どうしようもなく湧きいずる不安を克服し、ほのかな「生きがい」が生じる過程を林芙美子は作品の中に描いていることを、本発表では見出した。
  • A-4文化活動を通した生きがい ~尾崎翠を中心に~

    野中 咲希(日本大学)
    要旨
    尾崎翠における文化活動、とりわけ映画観賞をすることによって得られる生きがいについて論じた。文化活動に勤しむことは、時に悩みにもなるが翠にとってウェルビーイングのひとつに数えられる「何かへの没頭」へと繋がることが浮き彫りとなった。翠がチャップリンに触れた作品は他にも「映画漫想(一)」(1930)や「影の男性への追慕」(1930)などがある。
  • A-5「生きがい」としてのマンガについて -石ノ森章太郎作品を例として-

    伊藤 景(日本大学芸術学部文芸学科)
    要旨
    「マンガ」は読者にとっての生きがいであるとともに、マンガ家にとっても生きがいであったといえる。石ノ森は「サイボーグ009」を自身の手で完結することはできなかったが、脳内の構想をノートとして遺しており、このノートを手がかりに、最終章の構想を次世代のクリエイターが創作している。読者が、「サイボーグ009」を最終章へと導くクリエイターとなり、物語は紡がれ続けいていく。1つのマンガ作品が時代も世代も超えた上で、作品が生み出され続けている事実は、マンガが老若男女問わず多くの人の人生に影響を与えているといえよう。

<スポーツ・教育領域>

座長
橋本 純一(日本ウェルネススポーツ大学)
富川 力道(日本ウェルネススポーツ大学)
  • B-1民族スポーツの改革実践と問題点 -内モンゴルにおけるブフ競技規則をめぐる議論を中心に-

    富川 力道(日本ウェルネススポーツ大学)
    要旨
    本研究は、「ブフ協会」と新規則をめぐる議論を整理し、その経緯と問題の所在を明らかにすることを目的とした。結果、「ブフ協会」の諸行為はブフを私物化し、特定の地域のために競技規則を改定しようとした暴走であった。ブフの発展を見据えた改革とは到底言えない。内モンゴルにおけるブフ事業を担える「ブフ協会」の再建と合理的競技規則の改定が急務であるといえた。
  • B-2スポーツ観戦空間論 ~well-beingの視点から~

    橋本 純一(日本ウェルネススポーツ大学)
    要旨
    欧米の一部先進国ではスポーツ観戦空間は多機能複合したウェルビーイング空間として稼働している。我が国においても、エンドユーザ―(全てのステークホルダー)にとってのスタジアムが、それぞれの生活を豊かにするポジティヴな存在になるべく、クリティカルに見守っていくスタンスとホスピタリティ設計が不可欠であるといえる。
  • B-3高校野球が幼少年に夢を提供するために ~東京ドーム開催から幼少年に与えるインパクト~

    武井 克時(日本ウェルネススポーツ大学)
    要旨
    高校野球を東京ドームで開催することができるか模索した結果を報告した。結果、出場チームにストレスをかけずに済み、第103回大会は予定通り実施され東東京:二松学舎大付属高校、西東京:東海大菅生高校の代表校を決定して無事東西東京大会を終えることができた。史上初の東京ドームでの高校野球大会は、神宮球場、甲子園球場とは違う景色で、選手を含めドームにいた全員が感動して幕を下ろすこととなった。
  • B-4高校陸上競技部部員の主体的取り組みの重要性 ~インターハイ総合優勝するまでの17年間の監督・指導の分析を通して~

    塚本 敏久(日本ウェルネススポーツ大学)
    要旨
    土浦日本高等学校陸上競技部部員を対象にして、監督として指導した17年間(静岡インターハイで総合優勝するまで)の指導法とチームの熟成程度及び勝敗との関係について分析し、部員の主体的取り組みの重要性について明らかにすることを目的とした。その結果、部活動における生徒の『主体性』を重視するコーチング指導は、競技力や競技結果の向上だけでなく、教育的意義も果たし、生徒のその後の人生を豊かにし、生きる糧となることを示した。
  • B-5コロナ禍における中学生の走力に関する研究

    本間 一輝(日本ウェルネススポーツ大学東京)
    要旨
    2020年以降練習環境が劇的に変化する中、100m競走における走力(記録)が低下しなかったのは、指導者及び生徒達がともにコロナ禍による逆境を克服するため各々が創意工夫、努力した結果であると考える。生徒が、記録の向上だけを狙った商業主義に巻き込まれず、伸び伸びと運動に打ち込めるような環境の整備し、将来を見据えたトレーニングを啓蒙する等、指導者は尽力すべきであると考える。

<教育・体育領域>

座長
渋井 二三男(日本ウェルネススポーツ大学)
横山 典子(日本ウェルネススポーツ大学)
  • C-1コロナ禍におけるハイブリッド型講義の実践

    渡邉 真菜(日本ウェルネス歯科衛生専門学校)
    要旨
    歯科衛生士養成機関での教育においての紙媒体の配布資料の必要性について明らかにすることを目的とした。結果、学習効果という観点で考えるとペーパーレスであってもタブレット端末やパソコン等による書き込みを可能とすることにより、紙媒体でなくても十分な学習効果があるということも今回の調査で明らかとなった。
  • C-2高等学校における授業方法と学力の変化に関する研究

    遠藤 駿之(日本ウェルネス高等学校)
    要旨
    より充実した授業態勢にするため、授業方法の変化に伴って以前の学力(試験成績)と、以後の2022年までの成績及び生徒の意識の変化について分析、考察することを目的とした。教員は対面授業を実施するに当たり、リモート授業時に得た生徒の反応、対応要領及び反省等を含めたノウハウを今後に反映させ、如何に「おしゃべり」、「居眠り」等を抑え、生徒の学習に対する意識の維持向上を図らせることが重要であるといえた。
  • C-3「空」とは何か -「般若心経」の教え-

    尹 東燦(日本ウェルネススポーツ大学)
    要旨
    今回の研究では、思想的にこれらの考えを裏付ける大乗仏教の「空」について考察した。その結果、宇宙空間のすべての現象は暫定的な存在で、いつ、どう変わるかわからない。人間の価値判断は相対的なもので、万物はそれを超越して存在している。すべての現象をありのまま観察し、特定の先入観のもとで物事を考えてはならないとの教えがあった。
  • C-4動画による保育の見える化

    大竹 龍(ONE ROOF 江東区白河かもめ保育園)
    要旨
    今回、動画による保育の見える化について改善前と、改善後の変化を比較することにより、「日常の保育に関連した様々な機会を活用し子どもの日々の様子の伝達や収集、保育所保育の意図の説明などを通じて、保護者との相互理解を図るよう努めること。」という点が動画化により保障され、「保護者との相互理解を図るよう努めること。」に寄与しえることが示唆された。
  • C-5高校生のスマホ依存と自覚症状に着目して ~養護教諭として感じた生徒の様子から~

    齋藤 和江(日本ウェルネス宮城高等学校)
    要旨
    この研究は、疲労症状の要因の一つにスマホ依存が関係しているか、また、スマホ依存の防止策は有効であるのかを明らかにした。結果、Spearmanの順位相関分析の結果、疲労度とネット依存度には有意な中等度の正の相関関係を認めた(ρ=0.422、p<0.001)。生徒の健康課題の要因の一つが明らかになったことで、課題解決に向けた保健指導を行っていく。今後の保健指導を通し、将来、生徒自身のヘルスプロモーションの向上に繋げていく。

<生涯保健領域>

座長
鈴木 勝彦(日本ウェルネススポーツ大学)
薗部 正人(日本ウェルネススポーツ大学)
  • D-1コロナ禍における高齢者の縦断的体力変化について -茨城県利根町「きんとれ会」参加者の体力測定結果から-

    薗部 正人(日本ウェルネススポーツ大学)
    要旨
    本研究で行ったコロナ前とコロナ禍での高齢者の体力測定の結果、7項目中4項目に有意な低下がみられた。このことは、「きんとれ会」による運動する機会が奪われたことによる体力の低下と捉えることができ、利根町の「きんとれ会」による運動継続の必要性を明確にした。今後、超高齢化が進む社会での運動機会を増やす努力を継続し、高齢者の体力維持・向上の重要性が示唆された。
  • D-2自治体の大学誘致の現状と課題 -成功と失敗の要因-

    平山 実(日本ウェルネススポーツ大学)
    要旨
    地方自治体が大学を誘致し、地方の活性化を図る事例が多く見られた。その事例を分析し、成功と失敗の要因を明らかにした。結果、ハコだけきれいに作っても、学生が学校周辺または最寄り駅付近でアルバイトできる環境がなければ、厳しい。成功の要因は、「コンテンツ(教育の質)の保証」「専門性の徹底」「経済環境有」「地方中核都市へのアクセス」「精度の高いマーケティング」「ブランディング(新しい価値の創出)」であった。
  • D-3前近代の「疫病」への施策(しさく)と現代の「パンデミック」のサイエンス

    鈴木 勝彦(日本ウェルネススポーツ大学)
    要旨
    ウイルスの細胞内侵入と細胞内大増殖の力の仕組みを解明した現代のサイエンスは、ウイルスを活用した各種の遺伝子操作、医薬品の製造、癌細胞の撲滅などがおこなわれている。ワクチンや治療薬は短期間の開発は急速に対応したが、完全ではない。運動・休養・栄養をとり生命活動を高めて治癒力が動くことで、もとの健康を取り戻す。自然治癒力の作用の活用が考えられる。
  • D-42022年オレゴン世界陸上報告 -コロナ禍対応に視点をあてて-

    杉町 マハウ(日本ウェルネススポーツ大学)
    要旨
    今大会は選手村となったオレゴン大学内や試合会場は一般客も入れる状況であり、選手村からの外出制限もなかった。会場内では一般客を含めて、消毒液の設置やマスク着用者はほとんど見受けられなかった。大会後半に至り、各棟の入口に注意喚起の張り紙やマスクを配り始めたが、各々のチームが独自に検査したかは定かではない。以上の報告があった。
  • D-5アニメ聖地巡礼による社会問題の解決 ~大洗の成功例より~

    西村 優斗(日本ウェルネススポーツ大学)
    要旨
    今回はオタクではなくとも比較的にライトに楽しめるアニメ聖地巡礼の文化についての調査を行った。地方創生・経済効果、対人、交友関係・地域コミュニティ、少子高齢化の3つの観点から見ても聖地巡礼が社会問題の解決に寄与していることが明らかになった。私は同人活動やイベント主催を通して更に素晴らしさを伝える活動を継続したいと考えている。

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